種を拾う #クレマチス

クレマチスという花をご存知だろうか。春の終わりから初夏を彩り、蝶(バタフライ)のように軽やかな花を咲かせるツル性の多年草である。色も紫やピンク、白などがある。一重咲きや八重咲きの品種があり、園芸品種としても人気で、多くの園芸家に親しまれている。

わたしもそんなクレマチスファンのひとりだ。濃い紫の一重咲きタイプを咲かせたいと長年思っている。濃い紫という重厚な色彩と、風に揺れる軽やかな花びら、その対比、ギャップ萌えだ。

それならば、なぜその憧れのクレマチスの花をアイキャッチにしないのかというと、4シーズン連続で生育に失敗しているからだ。

隣のクレマチスは紫

今年に関してはリスクヘッジの意味も込めて2つの苗を用意したのにも関わらず、どちらも枯らせてしまった。思い当たる原因としては、土の排水性と保水性のバランスが良くなかったのだろう。それとも、出身がアウトレット商品*1であるのがいけないのだろうか。いや、ミニバラアジサイも、ラベンダーもアウトレットワゴンの出身である。出生は関係ない

隣の芝生は青いというが、他所の家の庭のクレマチスのが咲き乱れているのが妙に目に入る。壁にはわせた蔓の緑色は力強い。淡いピンクの八重咲きの花びらはまさに蝶そのものである。その可愛い花の中にあって、ビビッドな紫色の一重咲きは威厳すら感じさせる。隣のクレマチスは紫。状態なのである。わたしは歯ぎしりしながらそれを見ている。

ど根性クレマチス

家主にコツを聞いても「地植えして、毎年勝手に出てきて、誘引が追いつかない」などと言いやがる。当てつけか。庭だけにとどまらず、こぼれた種が駐車場の隅、アスファルトの隙間から発芽し、フェンスに蔓を絡ませ紫色の花を咲かせている。ベランダで充分気をつけて育てていたわたしの鉢は枯れた。一方で、駐車場の隅で忘れられたようなクレマチスは、雨水を飲み、フェンスをつたって花を咲かせたのだ。解せぬ。解せぬが、植物を育てていると、この程度の不条理はよくあることだ。わたしは心からその生命力に感動したのである。

クレマチスの種を拾う

7月、クレマチスは花の盛りを終え、子孫を残す準備をはじめた。種をつけたのである。わたしは家主にお願いして、その種を譲ってもらった。もちろん、駐車場の隅で咲いていた奴の種である。逞しいストーリーによって、生命力の強さも証明済みの種だ。また、こぼれ種という境遇が、わたしの部屋にある他のアウトレット出身の植物達と親和性が高いと判断したのだ。

こうして、わたしは来年もクレマチスの栽培に挑戦する。そのタフネスっぷりを見せつけて欲しい。来年の今ごろ、隣の庭を眺めるか、自分のベランダのクレマチスを愛でるか、その小さい種次第なのだ。この中から数%でも発芽してもらわないと、アウトレット商品でない、通常のキレイな苗を買ってきてしまう。

2015,7 梅雨 くもり

*1:花が落ちて、植物的には生きているが商品としては価値がなくなり安売りされた苗