別れる男に、花の名を一つは教えておきなさい。花は毎年必ず咲きます。
川端康成『花』より
思い出して欲しいがために花の名前を教える女も、その花を見て、毎年律儀に女のことを思い出す男も、馬鹿だ。愛すべきバカ。言わんとすることはわたしも分かる。ちょっと立場が違うが、実体験として知っているからだ。
ヤマボウシを見て昔の恋人を思い出した話を以前にした。
白黒の記憶 #ヤマボウシ – 私的植物生活概論
白いクルクマの花は、また別の女性を思い出す。恋人ではなかったが、それが余計に印象的なのかもしれない。
花を女性にプレゼントしよう
わたしは女性に花を贈ることが多い。わたし自身、花屋を見るのが好きで、新鮮な切り花を見ると買いたくなる。しかも、それによって女性が喜んでくれる可能性があるのだ。win-winなのである。一般的に、芸能人やアイドルでもなければ、花を贈られることに慣れていない女性が多い。それは、女性に花を贈る男性が少ないからだ。
言い方は悪いが、女性に花を贈るというのは大変コスパが良い。仰々しいのは必要ない。500円や1000円でお釣りがくるレベルでいいのだ。その理由も、誕生日や記念日でなくても構わない。
「最近がんばってるから」とか「春といえばチューリップだから」とか「ちょうど新鮮なブルースターがあったから」とか、理由なんて何でもいい。むしろ何てことない理由の方がお互い気を遣わなくて済むし、シンプルに花の美しさを楽しめる。
女性の気を引くためだけに花を買うなんて、まったく馬鹿な男である。それだから花の名前ひとつ知らないのだ。
個性的なクルクマの花
わたしは白いクルクマを女性にプレゼントしたことがある。クルクマ、白いバラ(SP咲き)、ミニリンゴ(グリーン)、緑のヒペリカム、ブプレリウム、ミスカンサス。グリーンと白を基調に、茶系のラッピングをしたミニブーケだ。写真がないのが惜しいが、とても良い出来だった。もらった人がいたら名乗り出て欲しい。
名前も忘れてしまったが、その女性はわたしより2つ歳上で、ショートカットでパンツスーツが似合う、控え目に言っても美人であった。だが、高飛車な空気など皆無で、活発で爽やかな性格を持っていた。わたしと真逆だったのかもしれない。
赤・ピンク系のわかりやすい美しさや、黃・オレンジの元気な可愛らしさ、そのどちらもしっくりこなかったから、白いクルクマを選んだのだ。
愛すべきバカと思いたい
わたしが今まで女性に贈ったもので、こんなに多くの種類を使ったものは無い。こうして名前を並べればわかると思うが、完全に気を引くために作ったのだ。まったく馬鹿な男である。
彼女とは数回食事をした後、「元カレと復縁した」という報告を受け会うこともなくなった。わたしに麦焼酎のルイボスティー割の美味しさを教えてくれたのも彼女だし、アンダーグラフの「ツバサ」を教えてくれたのも、ホテルの代金は男性が支払うものだと教えてくれたのも、彼女だった。名前は忘れたけど、白いクルクマを見ると微かに思い出す。今が旬の花だ
2015,7 晴れ