深みのある藍色はとても美しい。海よりも宇宙の色に近い。
日本において藍染めは奈良時代から行われた記録があり、海外では「Japan Blue」や「Hiroshige Blue」と呼ばれることもある。われわれ日本人にとっても馴染み深く、藍色(または紺)などを愛でる人は多い。あたかも日本古来のものと勘違いして胸を張りたくなるが、紀元前より世界の各地域で染料として利用されていた。日本には、大陸から琉球を経由して入ってきたのである。
藍染めの方法は、生葉染め、乾燥染め、すくも染めがある。現在では、化学染料のインディゴが用いられることが多く、古来からの手法で染められた生地は、民芸品や嗜好品の扱いになっている。
お前の血は何色だ
タデ科イヌダテ属のタデアイは「蓼藍」と書く。なんとも仰々しい。夏の盛りにあわせて葉を茂らせる一年草である。その葉は潔いほどに緑色で、藍色はどこにも見えないし、青でさえない。しかし、この葉を叩いたり、傷つけたりすると、青みがかった汁(簡単な染料)が染み出てくるのだ。生葉染めの場合は、食塩を加えて浸透圧で染液を抽出する手法もある。
緑色の葉の外見で、藍色の血(染液)と思うと、ピッコロ的だしSFチックである。左腕に宿る厨二な部分をくすぐってくる。
卵(種)で増える
ピッコロ大魔王(ピッコロさん)が死ぬ間際に卵を口から吐き出して子孫を残すことは、ご存知の方も多いだろう。このタデアイも一年草の植物なので、子孫を残さないといけない。もちろんシンプルに、花を付けて種を残す。どんなに叩かれ傷つけられても、卵は産まないのだが。
タデアイの花は可憐なピンク色で、やはり藍色を見ることはない。あの深みのある美しさを少しも感じさせない、どちらかと言うとかわいい系の花だ。旺盛な緑の葉と可憐なピンク、そして深みのある藍色。さまざまな色を持つタデアイだが、本質のカラーはいざという時まで隠してある。
「出藍の誉れ」もそれらしいが、そのエピソードはあくまで人間の利用側に立ったことわざだ。植物としての特徴を鑑みると「能ある鷹は爪を隠す」ということわざこそしっくりくる。なんともカッコいい奴じゃないか。