貴公は友人だから『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』の感想を聞いて欲しい

タイ料理屋さん

先日、飯田橋のタイ料理屋さんで友人たちとご飯食べてたんですよ、ヤム・ウン・センとかパッタイとか。刺激的で美味しいご飯と、冷たいビールがそろうと、わたしはだいたい饒舌になるのですが、持ちネタが偏っているので植物の話しをしがち。

そこで友人に「クリハラさんにとって、植物ってどんな存在なんですか?」と質問されました。間髪をいれず「研究対象です」と答えたんだけど、あれはなかなかクリティカルな言語化だったと思います。

自由研究をしています

研究と言っても、学会に所属しているわけでもないし、研究者として勤めているわけでもありません。どうも、クリハラ(@kurit3)です。わたしは自分のことを園芸家と規定し、ベランダで栽培したり、花屋さんめぐりをしたり、観察して写真を撮り、こうして文章を書いたりしています。

めちゃくちゃな自己満なんですが、この研究により自己の何が満足するのか、ざっくりいうと「好奇心」です。これは自由研究だと思っていて、しかし夏休みの宿題でもないし提出期限もない、その名の通り自由な研究。そしてこのブログは研究レポートということになります。

こうしてブログを書いていて思うのですが、自己満ならウェブに発信する必然性がなくてですね。しかしそれでも、植物に興味を持つきっかけになるとか、実際に育ててみるとか、その辺に咲いてる花をみつけてなんかいい気分になるとか、小さくとも読者さまに貢献したい気持ちがあるのです。あわよくば褒められたい。

その気持ちを、どのように行動に移すか。どんなブログにしていきたいか、試行錯誤しているわけなんですが、そのヒントが書いてある本を見つけました。

あなたには、鳥類学者の友人はおられるだろうか。

鳥類学者だからって
『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』川上和人(新潮社)

前置きが長くなりました。でも、前置きって大事じゃないですか、ブログでもタイトルとリード文が重要って言われてますし。その点、このエントリーは大丈夫だったのか疑問が残りますが、いったん置いて(棚に上げて)おきます。

この本の前置きは、とてもおもしろいから大丈夫です。本の序章「はじめに、或いはトモダチヒャクニンデキルカナ」から少し引用したいと思う。

あなたには、鳥類学者の友人はおられるだろうか。多くの方にとって、答えは否だろう。
(中略)
日本の人口を1億2千万人とすると、10万人に1人。つまり、10万人の友達を作らないと鳥類学者と仲良くなれないのである。

わたしには鳥類学者の友人はいません。なぜなら、鳥類学の職業的な研究者はこのようにとても少ないからだ。また、鳥類学者がシャイで友達作りが下手だから、とも書いてある。俺か。

この本では、そんな希少な職業である鳥類学者の仕事ぶりを知ることができます。しかし専門書ではないので、わたしのような素人でも楽しく読み進めることができました。ユーモラスな文章により、どんどん読めてしまうのも間違いないのですが、たぶん「鳥」というものが、そもそも気になる存在なんですよね。わたし、だけでなく皆さんにとっても。

多くの人は鳥類を憎からず思っているのだ。

日本でも、花鳥画と呼ばれる自然を対象とした絵画が古来より多く描かれてきた。
(中略)
そして、紳士淑女の皆さんにも、同じ血が流れている。間違いない、貴公も鳥を憎からず思っている。

空を飛ぶ、という地球上でも特異な能力であり、魅力を持つ鳥類は、多くの人にとって憧れの存在だと思います。とても気になる存在。

鳥類学者の友人はいなくとも、1つハードルを下げて「鳥を思っている人」は意外と身近にいたりします。わたしの場合も、親戚のおばさんは九官鳥を飼ってたし、文鳥をペットにしてる友人、バードウォッチングや撮影が趣味の人が、割りとすぐ思い浮かびます。

きっと鳥だけでなく、花鳥画の「」の方も、そんな気になる存在なのではないかと思っています。皆さんの周りにもいませんか。ガーデニングが趣味の親戚や、季節ごとに花の撮影に出かけるカメラマンや、園芸家を名乗るTwitterアカウントなど。

しかし、気になる存在であっても、実際にその分野にアプローチする人はやはり少ないのかな、という印象があります。

きっかけさえあれば…

好奇心があってもきっかけがなければ、興味の扉を開くどころか扉の存在に気付きもしない。鳥類学者を友人に持たぬことは、読者諸氏にとって大きな損失である。
(中略)
そういうわけで、今日からは私が貴公の友人だ。見知らぬ中年紳士の話を聞く義理はないだろうが、友人の言葉に耳を傾けるのは紳士淑女としての礼儀である。

紳士でありたいと思うわたしは、友人になったばかりの鳥類学者の話を最後まで読み終えました。本の終盤で著者は「長期的に明るく楽しく鳥類学に励むこと」を目標にあげています。

この目標について、とても共感するものがありますね。わたしの場合は鳥ではなく植物ですし、そもそも自由研究なのですから、なおさら明るく楽しく続けていきたいと思います。そして、友だちに話すように研究レポートとしてブログを書き、興味の扉を開くきっかけになれれば嬉しく思います。

おとなも自由研究したらいいと思う


研究って何かに没頭することと同時に、考えたり手を動かしたり、それをアウトプットすることだと思います。鳥じゃなくても、植物じゃなくても、いろんな人の自由研究のレポートが見たいです。

※Kindle版もあるけど、装丁デザインがカッコいいので単行本を買いました

ここまで読んでくれたあなたは、間違いなくわたしの友人です。ありがとう

2017,8 くもり