ソメイヨシノをアメリカ合衆国に贈った際の、返礼として日本にやってきた。ヤマボウシとそっくりな形状をしているので、アメリカヤマボウシと呼ばれることもある。
ミズキ科ミズキ属
ハナミズキの名は「花が目立つミズキ」という由来がある。赤、白、ピンクが春の風に揺れる様子はとても気持ちがいい。ただ1点だけ。白や赤のひらひらした部分は、花弁でなく苞である。実際の花は真ん中のつぶつぶした部分なので間違えないように。私的植物生活概論の読者の皆さまには、ぜひ正確な生物の情報を知っていてもらいたい。
ソメイヨシノが散った後、入れ替わりのタイミングで見頃を迎える。街路樹や庭木に植えられることも多く「あ、こんなところにハナミズキあったのか」と気づかされる。春の散歩は楽しい
街中で見かけるハナミズキ
街中でハナミズキを見ることが多いのは、成長が遅いからである。
成長が遅いのは、デメリットに感じられるかもしれない。野生の自然界ではその他の植物に負けてしまう。圧倒的成長!!!などと唱え、生き馬の目を抜くような現代の人間社会では、「使えない奴」烙印を押されてしまうだろう。
そんなハナミズキの特徴は、人間と共に生きる場合は有利になる。成長がゆっくりということは、手がかからない、世話もゆっくりで良いのだ。プラタナスの街路樹の記事で書いたが、街に生きる樹木は、たいてい剪定や落ち葉に苦慮する。幹が大きくなったのに、無残に刈り込まれた樹形を見るのは心苦しい。ハナミズキならば、遅い成長とあまり大きくならない特徴もあり、管理が容易なのである。園芸種としてはメリットが大きい。
また、成長がゆっくりなので樹形が崩れることが少なく、仕立ての自由度が高い。和風家屋で伸び伸びと育てるも良し、洋風建築に合わせてピシっと仕立てるも良しなのだ。春の花(苞)から、新緑、紅葉まで、いろんな表情を楽しめるのも人気の理由である。
長い目で愛でよう
まぁ、こんな話をして何が言いたいのか。「欠点と思われることも、別の場面や角度では輝くこともあるよ」みたいな、世界に一つだけの花的なことではない。「薄紅色のかわいいキミ」と語りかけながら、シンプルに愛でて欲しいだけだ。
2016,4 雨