初心忘るべからず #アサガオ

もう7月も終盤戦に突入したのか。(年齢だけでも)大人になると、時間が経過する感覚の速さに驚くことが多い。7割くらいのことわざは説教臭いが、「光陰矢の如し」というのは言い得て妙だと感じる。

植物の成長スピードに関する記事を以前に書いた。
「生きる速度」と植物の好みについて #多肉植物 – 私的植物生活概論
今回は多肉植物のスピード感とは真逆の、アサガオについて話したい。今年は、小学1年生以来のアサガオ栽培に挑戦したのだ。生活科の授業で育てさせられたのではなく、初めて能動的にアサガオと向き合うことになったのである。

アサガオの無い夏なんて

何十年も前に育てて以来、見てこなかったアサガオを育てるきっかけは去年の夏だ。紺地に大ぶりの朝顔の浴衣を着た美女と、街中ですれ違ったのだ。あぁ、これがニッポンの夏だ、アサガオこそ、誰の記憶の中にも夏を思い起こさせる花だ(ちなみに次点はヒマワリだ)、と強く感じたのである。

見た瞬間、蚊取り線香の匂いや、風鈴の音、蜃気楼に揺れる積乱雲、ラジオ体操のスタンプカードなど、さまざまな映像がフラッシュバックした。その極めつけが浴衣の美女(黒髪)だ。来年こそアサガオを育てよう、とすれ違う5秒くらいの間に決意していた。

アサガオの成長

今年の5月中旬、アサガオの種を蒔いた。その成長スピードには驚かされた。特に発芽から双葉、本葉にかけての展開速度にはびっくりした。「ポンっ」と、音が聞こえるようだった。中でも力強い成長を見せる株を選別し、プランターに植え替えたのだ。こいつならやってくれる。そう確信していた。

アサガオの成長はとても順調だった。梅雨の天気にぐずった様子も見せず、ベランダの天井に吊った麻紐を頼りにひたすら上を目指した。そして、梅雨明けとほぼ同時に最初の花を咲かせた。わたしのベランダには今、ヘブンリーブルーという名前のアサガオが咲いている。とても美しい。すれ違った浴衣美女のうなじが思い出される。

アサガオも咲いたことだし、疑いようのない、夏が来たのだ。小学生の頃のような好奇心いっぱいの密度の濃い夏にしたいものである。と、前向きになった直後に、20代最後の夏という事実を思い出し、膝から落ちそうになった。

2015,7 晴れ