ちょい足しの酸っぱみ #ウメ

盛岡冷麺をご存知だろうか。焼肉屋さんで締めに食べるアレだ。キムチやカクテキの量で、小辛・中辛・大辛など、調整して楽しめる素敵なメニューである。しかし、「別辛」と注文するのがちょっとした通(ツウ)なのだ。

その名の通り、キムチが別の小皿で添えられ提供してくれるのである。辛味の入っていない素のままの冷麺をまず楽しみ、キムチをちょっと乗せて変化を楽しみ、最後にはパンチの利いた辛い麺とスープを楽しめるのである。一杯の冷麺だったはずなのに!

変化を与えて楽しめるメニューとしては、名古屋名物の「ひつまぶし」も有名である。であるが、味の変化を起こす際の仕掛けが大がかりで「ま、それだけいろいろ準備すれば変化して当然でしょ」となってしまう。変化のハードルが高くなるのだ。

仕掛けがシンプルな方が感動も大きいが、変化も単調になりがちである。この塩梅がなかなか難しいのだ。

話しを戻す。そう、塩梅だ。つまり梅干しの話しがしたいのである。

おにぎり(おむすび)は最高だ

三角形でも丸でも、しっとりでもパリパリでも。遠足やトレッキングのお供として、またはオフィスでがんばる人の夜食としても、おにぎりは最高だ。シンプルな料理であるが、具がもたらすバリエーションは無限大であり、いろんな顔を見せる。幕の内弁当のような豪華絢爛なアクションは無いが、1個の具を重心に据えて、筋の通った奴だ。信頼できる。

見てくれ、この美しい三角形と、白と黒のクラシカルな明暗の対比を。左が昆布で、右がおかかである。や、おにぎりの事になるとついテンション上がってしまう。いったん冷静になろう。冷静になると見えてくる。おにぎりにも欠点があるのだ。それは最初のひとくち。

具に届かない問題

おにぎりはもちろん「具」が主役である。三角形の頂点にかぶりつくシーンはおにぎりを食べる際のピークだと思うが、主役である具に届かないのだ。これは実に惜しい。混ぜご飯タイプのおにぎりにすればひとくち目から楽しめるが、具のバリエーションがガクッと落ちてしまう。かと言って、2つに割って食べるような軟弱な態度は、おにぎりに申し訳ないし、美しくない。

わたしは、これ以上ないソリューションを発見したのだ。盛岡冷麺の「別辛」にヒントを得て、「別酸っぱ」とでも言おうかと思ったけど、語呂が悪い。とにかく、たった1個の梅干しを添えたのだ。

発見「ちょい酸ぱメソッド」

梅干しをちょびっとかじってから最初のひとくちを食べれば、それは梅干しのおにぎりである。具に届かない問題が簡単に解決できる。この方法は、2つのおにぎりなのに、第3のおにぎりを楽しめるお得感がたまらない。

  • 昆布
  • おかか
  • 梅干し

この3つの味が楽しめるので、あなたのおにぎり時間がステキになること間違いないのだ。しかし!ここからが「ちょい酸ぱメソッド」の真骨頂である。ひとくち目を「梅干しのおにぎり」として難なく楽しんだあとは、主役の昆布が登場する。

そこでもやはり梅干しを少しかじっておくのだ。

  • 昆布×梅干し
  • おかか×梅干し

お分かりいただけるだろうか。口の中では米を触媒とした化学反応が起きているのだ!これを口内調味という。それぞれの具材が組み合わさってとても美味しい。ぜひ試して欲しい。塩分過多には充分気をつけて。

新たな問題

1個の梅干しを添えただけでおにぎりがアップデートされ、こんなに楽しめるのである。デフォルトでちょい足ししていこうと思う。しかしわたしは気づいてしまった。こうなると「梅干しのおにぎり」そのものの存在理由(レーゾン・デートル)が危ういものになってしまう。梅干しのおにぎりに梅干しをちょい足しとか、意味がわからない。この事実を奴(梅干しのおにぎり)には何て説明してやればいいのかわからない。

2015,12 くもり

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